静坐
私はただ丁寧に夜あげて泣いた。

誰も儘なるありようを為たいだけなのだと言って
若さに雪崩れて無理を知らず、大きく涯をするためには、
必ずしもそれは必要な彷徨であったからだ。

風呂釜に程近く、雪の瀬も小さな爪を裂きに裂いて諸腕を引く。

他には何も有るまい。
月の、満ちたのが正しかったのだ。

私はいつも、また”人”もまた青と白く居たから、迫る日々の高架下にうだつ満つる退くるを指なりになぞる仕草は、拙いなりにも腐ったのや呆けたのをなりには知っており、如何ともせん微動などは、只に、落ち星リゲルのようだった。
# by kirito-s_paranoid | 2008-12-03 13:22 | 短散

ひとさらい
ほとばしるものを、言葉も雨も、風も、何もかもを
わたくしは一時たりとて書き留める事が出来ぬのだ

街の、交差する人の間に在ってなお、屑じみてゆくような渇れた歌に叫ぶ有り様は
惨めに道を這う回虫と、何も、変わらない

永遠は 此処を選ばない
バケツの花束宜しく、在るところへあらねばただ虚しく醜きを晒すのみで

遠く遠く海が聴こえる運命に、嗚呼 誰もがうんざりしている

日を流してゆくそれは指し示すために、狂怠だけをわたくしに与えたと

古い

旧いわたくしの日記にも、書いて、あった。
# by kirito-s_paranoid | 2008-10-26 20:15 | 短散

アルコン
嗚呼不公平だ
貴方はいつも
私を選ばない
そして世の何よりも
目を伏せてすら感じる世界にあって

整然と美しい

私では不足であるなどとは言わせない
しかし
その瞳にかなう魂でないのだ
幾夜の死を見届けたが

そうだ私ではないのだ

認めざるを得ない事実で
貴方は私を遊んでいる


敢然と
まとわりつく

貴方は、



生まれた時からその背中を知っている


貴方は、美しい 。
# by kirito-s_paranoid | 2008-10-18 22:35 | 虚ろなボヤキ

EJA MATER
”数えわたるたむけ 抜け殻の累 また陽刻みゆくとき 明日へ逆らうの如く母は子を抱きにけり”
セルマはいつでも無表情で「そういうこと」を謂うのだ。不穏よりも水っぽい、抑揚に欠けた表情で、明け方、私もまた金木犀を初めて知った月のことを考えている。眠れないのではなく、ただ在る地上が再び瞳開くその時を息を殺して待っているだけである。誰もがまた、それを知っている。わたくし独りがこの目を伏せた瞬間に、世が目覚めるということを。何故ならばわたくし達など悉皆非力な牧童でありまた無能な羊でもあり、角笛を吹くのに疲れて誰かが眠りこけている間に一つの世界が完結してしまった、から。死蝋セルマはぼうやりグロリアなどを口ずさみながら、こむこむと古いラムを傾ぶけていた。
永く調律のしていないアップライトピヤノはお払い箱も同然だったが、一度失われた絹目の耳朶を這わせるにあたり、往年の、紅頬した音色をそれがたやすく取り戻すことを、場に居る誰もが了解していたのだった。セルマはもとよりソプラノというには久しく遠い、夭逝の掠れた声で、その涙、とだけ言った。時は天恵の声にひざまづくことをアプリオリにくみ取っていたがための、彼の堕落であった
# by kirito-s_paranoid | 2008-10-16 10:57

返歌
焔なかれとてさきの灯とは観えざるに値せしか
死延ぶのその身うろに潜む不可視
天頸をぞかいてんげるものとは覚えざるや
# by kirito-s_paranoid | 2008-06-22 04:29 | 短散

返歌
尽きぬにはいづれ天球謳歌、否
現は葦揺らすほどの無力が生命
宙遠く浮かぶに
恣意躍々として果ていづこ求む
# by kirito-s_paranoid | 2008-06-22 04:29 | 短散

逼迫する身の内に飢える実態
我が世空ろ
天へ抜けるグレゴリオと思しき醒銘にも似て
拠るる大樹のがらんどう
まして轍揺る其れ紡ぎの音に、己稚拙の卑屈と知るが故
やはで愛でずに居られでや
最早舞ゐらむか我があしにても
昏迷の狂疾尚霧中に在りて膝折ることあたわず
アウロラの向こう襞
淡懐大赦をひた求むる小さきなれば今
# by kirito-s_paranoid | 2008-06-22 04:25 | 短散

無題
非ずとさえ非ず己の寂厄
月に輸授せむとて今宵雨恋の天鬼よ
滅すれば尚欲すと憶ゆ危うき我が身体
砧に震え隠して夜明くのを待てる
いづれ山の端も白く遅れて鵺の在れば
射落として観ゆるこそすさまじきさま
染み渡る紅の我に似て煽情まがまがしく
かしこに誇りたる曼綬紗華
口の端少し持ち上げつ俄かに我を嘲り
# by kirito-s_paranoid | 2008-06-22 04:22 | 短散

暗幕
放てばいつか翻り
風弄ぶまま宇宙に繋がるか暗幕のうねり
倦怠の鏡面とは儘よ
刻苦を厭うたが所以のおのが怯惹に責め立てられ
はゆる木漏れ日にも時のうつろわぬ
根は易く慈愛の困窮であった
持てるものすべてはこの乏しき咆哮なれば
君歌詠みの第を以って
如何に猛虎の露を拭うや
# by kirito-s_paranoid | 2008-06-22 04:21 | 短散

嘔吐
頭が くらくらするのね
こんな暗い部屋に毎日毎日何を忘れに来ているのかしらこの人は
どこの世界も似合いはしないけれど

無理が祟ってよ
社交 笑顔 協調 陽光
皆々不似合いなものばかりだというのに
慣れもしない足取りを合わせようとして踏み外す
そうして上條の雌を叩き起こして仕舞うの いつも
大馬鹿者に相違ないのだわ
結局大傷を負うのは自分なのに
彩子姉様も大概御優しいのよ
こんな人 閉じ込めてしまえばいいの私と同じように
ただの気狂いなのですもの
沢山の人間をひとつの体にお飼いなすって
どれほど重たいことでしょうね
辞めてしまえばいい 人など
また鉄格子の中で喚いて
もう彼岸へ渡り切ってしまえば好いのだわ


【蛇乃眼幻想第四幕/櫻灯篭より】










初夏は大嫌いだ
いつもいつも人死にがあって
思い出しては また現実に
左様、言葉は正に夢となりぬか
わたくしはいまも
死のまがい物よ
染まりきれず
この牢で鬱屈している憤悶の蝸牛

誰もが苦しいのだと窘められ笑顔で頷きながら
頭の中身が 笑っているのだ
誰がこの重みを判ろうか
所詮一人分の責任と祈り
時が解決するのだろ
お前たち羊の悩みなど
けれど私は
私たちは
ねえ
ねえねえ

ねえ 足がぬかるんでゆく

斯様の如、五月蝿いのだ
ひがんだところで何も始まらぬ
誰か教えてやってはくれまいか 私に
俯く言葉には何一つ前進も無く
衒いはいつか己を食い荒らす蛇になると

そんなだから
つまりは明日
黄色の紫陽花が咲くころに
私は其処へ往って

貴方とさいごをしよう
# by kirito-s_paranoid | 2008-06-22 04:16 | 微熱毒舌講
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「僕ら」の脳内電波航海日誌。どこからホントでどこまでウソだろ?夢から夢へ、此処は地獄の一丁目。

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